残すもの。
じいちゃん
ぼくはじいちゃんに会った事はない。
僕が生まれる前に戦争で死んだから。
ぼくの家。
それはじいちゃんが建てたものだった。
大工だった。
庭の栗の木で階段を造った。
天井は低かった。
それが日常の風景だった。
幼いぼくは、それが家というものだった。
会った事ないけど、じいちゃんの造った家に住んでいたんだ。
じいちゃんの大工道具は生まれた時からあった。
錆びてた。使い込んでちっちゃくなってた。
磨いた。
ぴかぴかになった。
そいつで、今度は自分がここに家を造るんだ。
そして、いつか自分の孫に自慢するんだ。
いや。
自慢なんかしなくていい。
感じてほしい。
ぼくはこんな家を創造したんだ。
と。
分かるかなぁ?
今の自分の全力で造ったものが。
一つだけ。
この地に残すもの。
自分が死んでも残すもの。
それが繋がることを願います。
〜PS じいちゃんの造った庭の栗の木の階段は僕が本棚に作り替えて今も使ってるよ〜